「自分の立場で」「相手の立場で」「相手の性格で」

ワークショップでは、コンセプトタイプだけが「相手の立場で考える」ことができ、モチーフタイプは「情性」があっても「相手の立場で考える」ことはトレーニングが必要であると説明しています。この2タイプ、いわゆる動的気質は「情性」があるといえるでしょう。

前回の記事で「相手の立場で考えられない」「将来の自分の立場で考えられない」は共通の症状「情性欠如」で説明できることがわかりました。プライドタイプとアピールタイプ、いわゆる静的気質は軽度か重度の「情性欠如」といえるでしょう。

「相手の立場で考える」には「情性」が必須ですが、「情性」があるからといって「相手の立場で考える」ことができるとは限りません。

ここで、心理学的に「相手の立場で考える」とは何かを整理してみたいと思います。

コンセプトタイプに見られる「相手の立場で考える」の実際

コンセプトタイプは常に「自分は相手の目にどう映っているか」を基準に行動しています。

人間は通常、自分以外の人間も「自分と同じ性格や価値基準で行動している」と誤解します。毎朝早起きできる人は、寝坊する人も努力すれば早起きできると簡単に考えますし、自分が怒りを覚えた人は、この怒りが他の人からも当然に共感してもらえるものだと簡単に信じているものです。

コンセプトタイプも同様の発想をしてしまい、「他の人も、自分がどう見られているか、考えながら行動している」と当然のことのように信じています。そのため、失礼な態度をとられたとき、相手は意味があって失礼な態度をとっていると解釈します。「きっとこちらに何か問題があって、気づかないうちに不愉快にさせてしまい、それで私に怒っているのだろう」と推測して、わからないながらも低姿勢でこれ以上の失礼がないように心がけます。

実際のところ、コンセプトタイプが何も失礼なことをしていないのに、失礼な態度をとられた場合、相手が100%悪いのです。コンセプトタイプも自分の行いに心当たりがないと「本当は自分は悪くないのではないか」とうすうす気づくのですが、常に相手の立場で考えるために、自分だけの理由で無関係な人に失礼な態度をとることが絶対にありませんので、「まさか、そんなことはないだろう」と自分に言い聞かせます。

常に「きっと自分が悪い」「自分が我慢すればまるくおさまる」「あれほど怒るのだから、それなりの事情があったのだろう」と考えて、本当の意味で「相手の立場で考える」ことができているとはいえません。言い換えるなら「コンセプトタイプの考え方を相手に当てはめて、相手の考えていることを推測している」のです。

もちろん、他のタイプも同じように「自分の考え方を相手に当てはめて、相手の考えていることを推測している」のですが、同じ動的気質のモチーフタイプは「相手の気持ちを考えるとき」と「相手の気持ちを考えなくていいとき」を自分なりの善悪で考えて独善的になります。そこに「相手の事情を考える」という配慮はありません。その意味では「相手の立場で考える」というのはほとんどないといっていいでしょう。
静的気質の2タイプは、配慮ではなく善悪でもなく、立場関係で考えます。親子だから、兄弟姉妹だから、教え子だから、同級生だから、同僚だから、上司だから、部下だから……などといった、常に立場を利用して、世間一般にどうあるべきかを含めた利害関係を基準に考えます。

このように、自分の考え方を相手に当てはめるというまちがいがあるとはいえ、コンセプトタイプだけが「相手の立場で考える」ということをしています。

段階を示しますと、[情性欠如で自分の都合のみ考える静的気質]→〔情性を自分なりの善悪で使い分け相手の立場を優先しない動的気質モチーフタイプ〕→〔情性を使い相手の立場を優先する動的気質コンセプトタイプ〕となります。ひとつめとふたつめは「自分の性格、自分の立場だけで考える」、みっつめだけが「自分の性格で、相手の立場を考える」となります。

本当の意味での「相手の立場で考える」

それでは、どうしたら誰もストレスにならない関係を築けるでしょうか。

それは「相手の性格で、相手の立場を考える」ということになります。それを受け入れて初めて「自分は悪くなく、相手が100%悪い」という状況を受け入れられるようになります。「相手の性格で、相手の立場を考える」ことができるようになったとき、人間関係の誤解はなくなり、無意味な自責の念から解放され、無駄な怒りをもつ必要もなくなります。吠える犬はあなたが悪くなくても吠えるように、怒りっぽい人はあなたが悪くなくとも怒りっぽいのです。その無礼にいちいち腹を立てていては身が持ちません。

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