ブラフマン教時代

仏教聖典ではブラーフマナ(司祭)の権威の失墜を声高に喧伝するが、クシャーナ朝時代のアショーカ王碑文のその後を追うとブラフマン教が簡単に勢力を復活させていることや、紀元13世紀にはインド亜大陸から仏教とアージーヴィカ教が消え、ジャイナ教が消えかかるように、ブラーフマナの権威が弱体化した時期はあっても、失墜というほどのものまではなかった。

さらには、正統な後継者である「テーラワーダ仏教」や「大乗仏教」では、信者に向けてガウタマ・シッダールタを称賛する必要性から、仏教こそ最高の教えとしなければならない。そのため、ガウタマ・シッダールタがブラフマン教修行者としての尊敬を集めていたことは省かれている。本来、ガウタマ・シッダールタはブラフマン教の教えを引き継いでいるものであり、その改革者たる存在である。その観点から、ガウタマ・シッダールタ自身が語った教えを探るには、当時のブラフマン教の教えや他の修行者たちの教えにも通じるものがあるということである。

その意味では、乱暴な言い方をすれば、ブラフマン教としての教えに立ち返ることで、仏教本来の形になるのである。何もかもが「ガウタマ・シッダールタのオリジナルだ」と盲信せずとも、インド亜大陸において、ガウタマ・シッダールタが聖人として崇められた由来があるのである。

少なくとも、たったひとつの核心を語るなら、「ガウタマ・シッダールタは、仏教開祖のつもりはなく、ブラフマン教指導者としての人生を生きた」ということなのである。こればかりは、信仰上においても、科学的にも、疑う余地がない。イエス・キリスト在世時にはキリスト教がなかったように、ガウタマ・シッダールタ在世時には仏教という宗教は存在しなかったのだから。

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