『道徳否定論プーラナ・カッサパ』『七要素説パクダ・カッチャーヤナ』『宿命論マッカリ・ゴーサーラ』『唯物論アジタ・ケーサカンバリン』『懐疑論サンジャヤ・ベーラッティプッタ』『ジャイナ教の祖師ヴァルダマーナ』の6名は、ガウタマ・ブッダと同時代の思想家だ。
北伝仏教の漢訳仏典では彼らを「六師外道」と呼んでいる。「外道」という表現は「道に外れた」という印象を与える。中国の仏教僧が仏教以外を邪道と解釈して漢訳したものと思われる。
しかし、「外道」の原語は「ティールタカラ」で「渡し場を作る人」の意味でしかなかった。彼岸に渡るため、此岸に渡し場を作る意味であるから、人々を導く人の意味でしかない。ジャイナ教のヴァルダマーナの別称でもあった。
南伝仏教のパーリ語仏典のひとつ『ディーガ・ニカーヤ』では、上記の6人の師匠を「サンガをもつ者、徒衆をもち、徒衆の師で、世間に知られ、名声があり、渡し場を作る人であり(宗派の開祖)、多くの人々に尊敬されている人たち」と表現されている。
日本に伝えられているような「軽蔑された思想家」といった意味合いはなかったのだ。ガウタマ・ブッダも弟子も、彼らを世間に認められた思想家として認識していた。
参考文献:『沙門ブッダの成立 原始仏教とジャイナ教の間』
山崎守一・著
大蔵出版・刊
2010年11月30日発行
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