宿命論マッカリ・ゴーサーラ

紀元前6世紀から紀元前5世紀のガンジス河中流域および下流域に現れた、ガウタマ・ブッダと同時代の思想家たちの一人。

ジャイナ教の伝承では、彼はジャイナ教の祖師ヴァルダマーナと共にニガンタ派で6年間修業したのち、アージーヴィカ教を開いた。
アショーカ王碑文でブラフマン教、仏教、ジャイナ教徒と共に記載される。アショーカ王の孫であるダシャラタ王がアージーヴィカ教に洞窟寺院を寄進していることから、マウリヤ朝時代まで一大勢力を有していた。その後、ジャイナ教に吸収されながらも13世紀までは存続した。

彼は、地・水・火・風の四元素と、苦・楽・霊魂・虚空・得・失・生・死の計十二元素で生物は構成されているとした。これらのうち、虚空は他の十一要素を存在せしめる場所である。
基本的にパクダ・カッチャーヤナの七要素説と同様の道徳否定を展開する。彼のいう苦・楽も、人間がどう感じるかの問題ではなく、人間が感じる前に独立して存在する実体だとした。これらの十二要素は作られたものではなく、他のものを産み出すこともない。不変で安定しているという。物理学の質量保存の法則のように、あるいは、水の分子を水素と酸素に分離しても、水素と酸素は互いに壊さないように、彼がいう十二要素も互いに存続に関して影響し合わないという。
パクダ・カッチャーヤナの七要素説との違いは、すべての現象の挙動が物理学の計算のように定められたものであり、それぞれの意思はまったく作用できないことである。火のない所に煙は立たないように、すべては影響し合って挙動が決まるものであり、人間の意思さえもその範囲内であるとした。ブラフマン教でいうカルマも存在せず、すべてが定められているという。

この時代は貨幣制度の定着と、都市の形成、さらには、宗教家と資産家の地位が逆転する社会という価値観の混乱があった。

参考文献:『NHKブックス111
原始仏教 その思想と生活』
中村元・著
NHK出版・刊
1970年3月20日発行

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