幻想現実の起源「哲学者ヤージュニャヴァルキヤ」

紀元前7~前6世紀のヤージュニャヴァルキヤ(Yājnavalkya)は伝承によると、ウッダーラカ・アールニの弟子だったという。ウッダーラカ・アールニは世界創造の哲学を語り「有の哲学」と呼ばれる。ウッダーラカ・アールニは世界が「有(ブラフマン)」から「自己(アートマン)」が「名称と形態」を伴って展開したものと考えた。すでに展開されている宇宙の中で我々が輪廻転生し、解脱すれば「有」に帰入するという。

ヤージュニャヴァルキヤはそう考えなかった。
ウッダーラカ・アールニは宇宙を実体として捉え、祭祀と善行と布施でよい環境に輪廻転生するとしたが、ヤージュニャヴァルキヤは自己(アートマン)がこの宇宙を作っているので、善行のみでよい環境、欲望による悪行で悪い環境に輪廻転生するとした。
いわゆる「自己が宇宙を生成し続けている。宇宙は欲望が反映されており、欲望を手放さなければ不幸になる。欲望を手放せば、自己と一体になって宇宙を生成する」という。

同じことを言っているようだが、発想の順番を変えたことで、まったくちがう意味になっている。
ウッダーラカ・アールニは「自己によって完成した宇宙が先にあり、意向で、すでにあるよい環境か、悪い環境に転生する」とした。
ヤージュニャヴァルキヤは「自己が先にあり、意向で、宇宙の中にまだない環境を生成する」とした。
宇宙が先か、意向が先かという話である。宇宙が先であれば実体として存在しているが、意向が先であれば宇宙は変幻自在になる。意向次第で宇宙が定まるのであり、定まった宇宙は存在しないことになる。

ヤージュニャヴァルキヤは宇宙(ブラフマン)と自己(アートマン)が同一であることから、ここまで理論を展開したのだ。ブラフマン教の初期の奥義書のひとつブリハッド・アーラニヤカ・ウパニシャッドでは、ウッダーラカ・アールニとヤージュニャヴァルキヤが議論し、ヤージュニャヴァルキヤが勝ったと記録している。

ブラフマン教のブラフミン(司祭)の中で、ヤージュニャヴァルキヤだけが、解脱する方法として「善行」のみを問題にし、「祭祀」を重要視しなかった。ヤージュニャヴァルキヤの深い洞察はのちのガウタマ・シッダールタ(仏陀、釈迦)に受け継がれた。

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