梵我一如の起源「哲学者シャーンディリヤ・ヴィディヤ」

日本では仏教徒が多いために、梵我一如は仏陀(釈迦)の教説だと誤解している人が多いのではないだろうか。仏教徒向けの宗教書では仏陀以外の教説は語らないであろうから、これは致し方ない。
宗教学や哲学の研究者向けの書物に目を通せば、梵我一如は当時の古代インドで広く信仰されていたブラフマン教(バラモン教)の奥義書に記載されているものであり、仏陀も当然に知っていたであろうとされる。真実を知るためには、宗教の垣根を越えなければならない。
日本においては仏教徒向けと研究者向けの書物が混在し、その区別がむずかしい実情もある。さらに古代は神話や伝説が生まれる時代である。古代の仏教徒が仏陀を神格化し、なんでもかんでも仏陀の功績にしてしまったり、当時の別の宗教の伝承を仏陀の物語としてすり替えてしまったりして、ますます真実がつかみにくい。
非二元(ノンデュアリティ)の起源を調べるため、ヒンドゥー教の情報を探したが、思いのほか骨を折った。インターネット上にほとんどなく、書籍も専門書となれば1万円近いものばかり。少ない情報からある程度、インドの六派哲学や時代の見込みを立てて、書籍を手に入れ目を通すという繰り返しとなった。

「梵我一如」を初めて語った人物

梵我一如を始めて語った人物は、紀元前8~前6世紀のシャーンディリヤ・ヴィディヤ(Sandilya Vidya)といわれる。しかし、ブラフマン教の聖典ヴェーダの奥義書ウパニシャッドのひとつ「チャーンドーギヤ・ウパニシャッド」にたった4節のみの記載しかない。

シャーンディリヤの論説はひとえに「意向が梵我一如を実現する」の一言に集約できる。
「私のアートマン(我)はきび粒の核よりも極小で、天よりも大きい」と意向をもつと、死後にブラフマン(梵)に合一できるという。

「この世においてもつ意向のまま、この世を去った後も同じ意向をもつ」と記載があることから、生前に瞑想によってブラフマンと合一できた者は、死後もブラフマンと合一できると解釈できる。
4節の結びに「この世を去った後、それに合一したいという意向のある人は、この点に疑いをもたない」とあることがそれを裏付ける。

量子脳理論や量子コンピュータの理論との不思議な合致

そして、私が昨日投稿した記事「梵我一如と量子物理学」に掲載したさまざまな科学者たちの科学理論とシャーンディリヤの論説は不思議と合致する。
シャーンディリヤが「極小・微細で極大」と表現したアートマンはブラフマンでもあるといったが、身体の中にある極小・微細の素粒子ニュートリノと、それが偏在し宇宙全体が極大な量子コンピュータになることを当てはめると、「アートマン=ニュートリノ=宇宙=ブラフマン」と言い換えても矛盾がない。

シャーンディリヤは伝統的ヨーガの瞑想によって、「アートマン=ブラフマン」というインスピレーションを受けていたが、地球が丸いとも知らない古代である。目に見えない空気の存在も知らなかった。気息こそ生命エネルギーと信じて疑わなかった。
そんな彼にとって、「アートマンは極小・微細であり極大」と感じたとき、それはどうしてなのか、どうして矛盾しているのかは説明できなかったであろう。「瞑想してブラフマンと合一している者はそれを疑わない」と言うことしかできなかった。とにかくそう感じるのだから仕方がない。20世紀に誕生した量子物理学がただでさえ一般科学者から狂っているといわれながら発展し、21世紀の最先端科学で量子コンピュータの研究開発によって、「脳は量子コンピュータである」と推測し、「宇宙も巨大な量子コンピュータである」と仮説を立てたが、現代の人類でさえも受け入れがたい事実なのだ。古代の哲学者がインスピレーションで受けていたことは驚異である。

「古代の宗教家の妄想で、一致はただの偶然だろう」と思われるかもしれない。
もしそうならば、宗教家の権威づけに語られたそれは、つじつま合わせをしないと権威づけが達成できない。つじつま合わせをせず、説得力がないままに誠実に理論を終わらせているところは、「感じたままに語った」にすぎないだろう。
さらに言えば、ブラフマン教の司祭が祭祀でなぜ効果があるのかを解明するために奥義書ウパニシャッドが書かれた事情もある。ブラフマン教の司祭が語っているのであれば権威づけも有用であろうが、奥義書に登場する哲学者は、ヨーガ行者に読まれれば済む話である。会社資料に例えれば「社外秘」のようなものだ。ますます権威づけの意味がない。実用的でなければならない事情があった。

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