釈迦のさとり「新しいスピリチュアルの萌芽」

釈迦は涅槃寂静に達成したとき、神通力も得たと告白しています。

近年、世界で流行している新しいスピリチュアルの潮流「奇跡のコース」「ノンデュアリズム」などは、ヨーガ行者や仏教僧が欧米にヨーガ(禅)を紹介したことが起源となっています。
この新しいスピリチュアルの潮流は、日本には2010年代になってから知られるようになりました。日本は欧米よりも遥か昔、日本史における古代にはすでに仏教が伝来していたはずですが、この新しいスピリチュアルの潮流に限っては欧米に10年はおくれをとっているといわれています。

今のところ「奇跡のコース」と「ノンデュアリズム」がヨーガ(禅)を起源にしているとは、日本の一般の方にはほとんど知られていないようです。スピリチュアリティ自体が西洋的な印象を秘めており、日本の出版界における紹介の仕方もファッショナブルなものになるよう心がけているように見受けられます。「奇跡のコース」と「ノンデュアリズム」の当事者はそこまでではなくとも、仏教色をもたせない努力はなされているようです。

釈迦のさとりと、これらの新しいスピリチュアルの潮流には大きなちがいがあります。釈迦の時代は根本仏教であり、新しいスピリチュアルの潮流は釈迦入滅の数百年のちのインドに起こった大乗仏教とヒンドゥー教がミックスされたものだというところです。

日本仏教も大乗仏教に分類されますが、新しいスピリチュアルの潮流と混同されないためにも、あまり知られていない仏教の歴史をここで解説させていただきます。

仏教のその後

釈迦はさとりを開いたあと、衆生(一般の人)ひとりひとりの「思い込み(執著)」を見抜けるようになったために、対機説法をインド各地で実施して、多くの弟子を抱え、各地の富豪や王族から寄付が集まりました。

80代になって釈迦は下痢が続き、無理をして歩いて故郷(現在のネパール)に向けて旅をしていたところ、鍛冶屋を営む信者から供養された料理を食べたことが原因となって容態が急変し、遺言を残して亡くなりました。

死後100年は口伝により釈迦の教えは言い伝えられましたが、100年後になって生前の釈迦を知る人が皆無になったとき、お経が書かれるようになりました。つまりお経はすべて又聞きということになります。

釈迦は紀元前7~前4世紀の間に生きていたことは確かですが、正確な時期は特定されていません。

紀元前3世紀に当時のインド全域をほぼ制覇した国を継いだアショーカ王が、インドで仏教を国教とした初めてで最後の王となりました。この時代は周辺諸国にも仏教が広まっていきました。インドにおける仏教のピークはこの時代となり、その後衰退していくことになります。

紀元前後になって大乗仏教が自然発生いたします。この時代を世界史で見ますと、インドのブラフマン教(バラモン教)と同時代に栄えたゾロアスター教が現代のイスラム圏で信仰されておりました。ゾロアスター教の終末論がユダヤ教やキリスト教に引き継がれたように、大乗仏教の妙法蓮華経にも末法思想が取り入れられます。現代のイスラム圏にも広まっていた仏教は、ゾロアスター教と接触していたということになります。
釈迦はブラフマン教の儀式を否定し、ブラフマン教で拝む神仏などの「人間を超えた存在」を語りませんでしたが、大乗仏教になることで「人間を超えた存在」を拝むようになり、仏教の「ブラフマン教化」が始まったのです。釈迦の教えが実際にどうだったのか迷いが出てきたからかもしれません。または、一般信者が司祭に儀式(呪文)を任せるブラフマン教の手軽さから、ご利益目当ての信仰が中心となり、仏教もご利益が求められるようになったからかもしれません。

紀元後2世紀にナーガールジュナ(龍樹)が現れ、大乗仏教に中観派という新しい流派を作り、初めて「空」を打ち出しました。

紀元後3世紀にマイトレーヤが瑜伽行唯識学派を形成しました。

紀元後4世紀にかつてのブラフマン教はブラフマンを拝むのではなく、ヴィシュヌかシヴァを拝むヒンドゥー教に姿を変えていきました。

紀元後5世紀にパタンジャリがヨーガ・スートラを著しました。ヨーガの瞑想法が確立されたのは、実に釈迦の考案から800~1100年後のことです。梵我一如思想が見えますが、のちに大乗仏教の影響を受けたシャンカラのそれとはちがいがあります。

紀元後7世紀にブラフマン教古来の儀式(呪文)がヒンドゥー教で注目され始めました。ヒンドゥー教に対抗するために仏教にも取り入れられ、秘密仏教(密教)化しました。紀元後8世紀には早くも日本に伝来しています。

同じく紀元後8世紀にインドのヒンドゥー教でシャンカラという人物が現れ、仏教の思想と僧院運営をヒンドゥー教にも初めて取り入れました。ヒンドゥー教による「仏教化」です。

紀元後15世紀にはインドにおける仏教は消滅したと考えられています。

結局のところ、日本には秘密仏教(密教)と呼ばれる「ブラフマン教の教義と儀式を取り入れた仏教」が伝来したという形になりました。

新しいスピリチュアルの潮流を理解するために必要な基礎はここまでです。次回、現代におけるその影響を解説します。

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